日本百名山で最も難易度が高い山はどれか?意見が分かれるところですが、この北海道の幌尻岳という人が多いのです。理由は数十回の渡渉(橋のない川を水に浸かりながら越える)。雨で川が増水すれば、川止めを食らいます。無理に渡ろうとすると、流される危険が。常に天候に気を配っている必要があります。
今回は初めての沢登りということもあり、スポーツ用品店で、沢登り専用グッズを買い込んで持参しました。グッズには、沢登り用の(川底を歩くための)シューズ、靴下、スパッツ。靴は通常の山登り用と二種類を持参。ズボンも沢登りに適した速乾性のものと、一般的なものと二つ。さらに東京からは遠い。当然飛行機です。川止めも想定して、三泊四日で計画しました。
まず千歳まで飛んで、バスで苫小牧へ。苫小牧の駅近くのスーパーで、水その他を買い込む。バスターミナルから日高行きのバスに乗り、振内で下車。そこからタクシーを呼ぶ。一山越えて、豊糠山荘に到着。今晩はここで泊です。この豊糠山荘は昔の小学校の跡で、廃校後に山荘にしたもの。部屋は相部屋二段ベッド。浴場あり。夕食は豪華ジンギスカン料理でした。ここで明日、幌尻岳登山の希望者を運ぶマイクロバスの予約を受け付けています。朝3時出発だそうです。
夜は部屋に虫が入ってきてなかなか眠れません。時間通りに起きて、数人の登山者とバスに乗る。真っ暗な中出発。バスは舗装なしの悪路を飛ばして走ります。登山口到着。まだ辺りは薄暗い。ヘッドランプをつけて出発。しばらく林道を歩きます。林道は取水ダムで終わっています。そこからは額平川の上流に向けて渡渉の連続です。
渡渉とは、下半身を川の水につけたまま川底を歩いて向こう岸まで渡ることです。川の半ばで転んだら全身びしょ濡れになるから、手にダブルストックを持つと良いですよ。渡渉回数は数えたら30回くらいあったと思います。(なぜか帰りのときの方が回数が多かったように記憶しています) 水は最大で股下まで来ていました。渡渉地点には目印があるので、向こう岸の目印との間を最短で渡ればよい。川の流れはそれぼど速くはない。ストックを持ていたので安定して渡れました。ただし、裸足の場合、川底の石の上に立つと滑るかも。
渡渉を終えたところが幌尻山荘です。ここは無人小屋なのですが、夏の期間だけ管理人がいます。今晩一泊の宿泊代を払うと、一人分の毛布を貸してくれます。管理人他、人は見当たりません。寝床を確保してから、登山靴とズボンを履き替え、不要な沢登りグッズを小屋において、いざ山頂を目指して出発です。
そこから先は普通の登山です。それほで急坂でもない。しばらくして尾根に出ます。多少急登あり。命ノ水を越えてさらに登ります。本日天候は良くない。霧の中に峰が見えます。あれが山頂か?峰をいくつか越えて山頂到着。とりあえず写真を撮る。
山頂には誰もいません。辺りは霧で視界はありませんが、峰から下のカール(注)が雲の切れ間から望めました。ほどなくして下山。下山中、昨日同じ部屋に泊まった中高年夫婦の奥さんとすれ違いました。「あれ、旦那さんは?」。そのずっと後を遅れて歩いていました。
幌尻山荘に戻る。時間は午後1時。山荘にはいつの間にか驚くほどたくさんの人が到着していました。恐らく明日山頂を目指すのでしょう。青山としてはこのまま川を渡渉して、豊糠山荘から振内を経由すれば本日中に苫小牧あたりまで、あわよくば東京まで帰れたかも?しれなかったのですが、(そうすればたった一泊) 折角だから今晩はここ(幌尻山荘)で泊です。
就寝まで時間があり、小屋の前に敷かれたビニールシートの上で過ごしました。食事は例によって栄養食一個。それと水。手洗いやトイレは山荘のものを利用。おばんさのガイドが数人のお客さんを連れてやってきました。昨日豊糠山荘に泊まっていた人たちです。お客さんの食料や水は若いガイドが背負っています。山荘に着くなり、その若いガイドに忙しく指示を出していました。ガイドも大変です。
夜になり、シェラフシートに入り就寝。小屋はほぼ満員です。小屋に着いたのが早かったため、寝床は一番奥の壁際。例のごとくラジオを聞きながら寝る。深夜指に何かが?払った途端刺されました。蜂です。(恐らくアブ?でしょう) 指を針で刺されたような痛みですが、時間が経っても痛みは全く引きません。初めての経験です。翌朝起きても痛みは引いていませんでした。
翌日例のごとく暗いうちから起床。シェラフをリックにしまい、沢登りシューズに履き替え準備OK。足下が見えるようになってから出発。(闇の中の渡渉は危険です) 同じように渡渉を繰り返し、林道に出ました。靴を履き替え、マイクロバスのバス停まで歩く。バス停到着。バスの中には数人のお客さんがいました。昨日出合った中高年の夫婦もいます。出発時間があったため、バスの手前で靴を洗う。
豊糠山荘到着。マイカーの人はそのまま帰宅。青山は携帯に登録してあった(行きのとき乗った)タクシーへ電話して、そこから振内まで乗車。バスを待って、平取町へ。そこの平取町国民健康保険病院に行き、昨夜蜂に刺されたところを治療してもらいました。自分としては、蜂に刺されたぐらい放っておいても大丈夫だと思いましたが、痛みがまだあったため念には念を入れて。塗り薬と飲み薬をいただきました。登山中病院に寄ったのはこのときが初めてです。そのときの診察券をいまだに持っています。常識ですが、山へ行く場合、必ず保険証を携帯のこと。
近くの料理店で昼食を取り、さらにバスでJR日高線の富川駅へ。そこでしばらく電車(気動車)を待つ。待っている間に雨が降ってきました。今日幌尻岳に登っている人たちは、川止めを食らわないか?
電車はときどき急ブレーキを踏む。ここ北海道では、鹿が線路にいることが多いのです。苫小牧着。本日中に飛行機に乗れば二泊三日で十分東京に戻れたのですが、三泊目をこの苫小牧でとり、翌朝北海道を後にしました。
(注) カールとは、昔氷河時代に山が氷で削られた跡。
写真1 豊糠山荘
写真2 林道終点
写真3 幌尻山荘
写真4 幌尻岳山頂
写真5 三角点
写真6 山頂の様子
写真7 山頂から尾根
写真8 カールを見下ろす
写真9 幌尻山荘に戻る
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