甲武信岳とは、甲州(山梨県)、武州(埼玉県)、信州(長野県)の三つにまたがるためにつけられた名前です。ご存知と思いますが。
この時期青山は仕事が変わり、月曜日と金曜日が休めなくなりました。仕方なく週の真ん中、火水で休みを取って出かけました。一泊二日の小屋泊りです。
ルートとしては長野県側から入って山梨県側に下る。東京からJR中央線、さらに小海線の信濃川上駅で下車。駅前でタクシーを呼びます。登山口である「毛木平(もうきだいら)」の駐車場まで。駐車場には数台の車が停まっていました。そこから登山道に入ります。川に沿って進む。途中の分岐で「十文字峠」方向に向かいます。橋を渡るところに「千曲川源流」とありました。
千曲川はやがて信濃川になり新潟まで流れる日本一の大河です。同じくここ甲武信岳は荒川の源流にもなっています。荒川は東京湾に向かいます。つまりここが日本海側と太平洋側の分水嶺。
山道を登って1時間半ぐらいで、「十文字小屋」に到着。予想より早く着いたので近くの水場などを散策。その後小屋に顔を出す。小屋の煙突から煙が漏れていました。既に管理人さんが上がってきている様子。この小屋はトイレもなかなかのものです。ちゃんと男女別にありました。
小屋にはおばさんが一人。予約の電話をしたときに出た人です。本日の宿泊客は青山一人です。9月の登山シーズン中ですが、こんな週の真ん中に泊まるような客はいないらしい。山小屋は大体そうですが、管理人さんは普段は麓に住んでいて、予約が入ったら上がってくるみたい。青山一人のために山道を登ってきたのです。ここまで「1時間半で来た」と答えたら「速い」といわれました。
夕食はスープの中に玉ねぎがまるごと入っているだけ、あわせて管理人さんが下で買ってきたフライドチキンもいただきました。青山はこれまでに全国の山小屋五、六十軒ほどに泊まっていますが、小屋で出された食事がまずいと思ったことは一度もありません。山で食べるものは何でもうまい。この小屋も例の「東アルプス楽集国」のスタンプをやっていた(当時)ので、スタンプと同時に4つ貯まったためバッジをもらいました。
夕食の後片付けをしている小屋のおばさんはしきりに携帯電話?で里の人と話をしている様子。「大丈夫たらか、心配いらないよ」という声が聞こえてきます。恐らくおばさん一人なので心配なのでしょう。相手は。
夕食後は30分だけテレビを見る。どうやら太陽電池で、わずかながら電気が貯められる仕組みのよう。ここは電気(発電設備)がないため、照明はランプです。小屋の廊下にランプが吊るされている光景がなんともいい感じです。
テレビを見ている間、外は土砂降り。明日の天気は相当悪そう。そう思いながら早々と布団に。普段山小屋では寝付きが悪いのですが、青山一人で小屋を占有している精か、一番寝心地のいい寝床を選び、雨の音を聞きながらぐっすり寝付けました。
翌日起床。朝食なし。おばさんはまだ奥で寝ている様子。何の物音もしません。気にせず早々と出立。
雨は降っていませんが、霧が濃い。湿っています。下界は雲で覆われて視界なし。途中には鎖場もいくつかあります。湿った鎖を素手でつかみながら岩を登ります。鎖の難易度は大したことはない。
やがて三宝山に到着。この隣が甲武信岳ですが、ここは甲武信よりも標高が高い。実はこの三宝山が埼玉県の最高峰なのです。
一旦下っていよいよ甲武信岳山頂へ。山頂には百名山の碑があります。一人だけ登山者がいました。話を聞くと毛木平から来たらしい。
山を降り下の山小屋(甲武信小屋)で「西沢渓谷」への道を聞く。親切そうなお兄さんが教えてくれました。一旦隣の木賊山に登り(この登りが全行程中一番きつかった)、その先はひたすら下りです。1600メートルを下ります。一組だけ登ってきた男女とすれ違い、甲武信までの時間を聞かれました。気を抜いたとたん、足が滑ってむき出しの腕を枝で傷つけました。金峰山に続いて二度目です。
さてようやく西沢渓谷に到着。バスに乗ろうとしたところ、本日は平日のためにバスはなし。なんとも失敗しました。仕方がない。駅(JRの塩山駅、駅まで20キロぐらいはあるかも?)まで歩くことに決めました。もはや登りはないし本日中には着けば何とかなる。そう思って140号道路をひたすら歩く。と、途中で軽トラックを運手していたおじさんが大声で怒鳴っている。どうやら「乗れ!」と言っているみたいです。いつものようにお断りすると、
「いいから乗れってんだ。ばかやろう!」そこまで言われたら仕方がない。隣に乗り込みました。
おじさんの話だと、「男だから乗せた」?らしいです。車で行くときに見かけた登山者が、帰り道でもまだ歩いているのを見て、乗せたとのこと。山梨は気さくな人が多いらしい。以前にも声をかけられたことがありますが、乗ったのは今回が初めて。
一点だけ注意。車に同乗させてもらったら謝礼は不要です。ただ感謝だけすればいいのです。
おじさんの都合で塩山駅ではなく山梨駅で降ろされました。そこから特急に乗り東京へ戻りました。
写真1 千曲川源流
写真2 十文字峠
写真3 十文字小屋
写真4 下界の様子
写真5 三宝山
写真6 甲武信岳山頂
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