妖怪物語
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夜、川に架かった橋の上に立っていると、橋の下の川の方から、ザラザラとまるで小豆(あずき)を洗っているような音が聞こえる。
もちろん橋の下には誰もいない。音はすれども姿は見えず、人々は恐ろしい妖怪の姿を連想する。
翌朝同じように橋の下を見ても何もいない。例の小豆を洗う音もしない。しかしその晩もまた小豆を洗う音は相変わらず聞こえていた。
これは川にはまった石や板切れなどが川の水に当てって音がしているだけである。昼間は音がしていないのに夜だけ聞こえてくるのは、夜はあたりが静まり返っているため、どんな小さな音でも気になるからである。
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