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科学者の使命


 この章を終わるに当たって、科学について今一度確認してみましょう。
科学の目的は、まず真実の探求です。何が正しく何が誤っているのかを自分自身が行った実験と観察によって考察するのです。その真実を理解し、それを現実に適用して、自分が求める幸福な状態をこの世界に実現すること。それが最終目的です。
したがって人間は誰しも科学を実践する必要があります。
さて、一般の人とは別に科学を専門とするいわゆる科学者としての態度について考えてみたいと思います。
科学者だって人間ですから、一日24時間365日科学をしているわけではありません。しかし科学者たる者、人々に科学を啓蒙するという使命を負っていると思います。

■科学者という職業
・科学を人に教えることを職業としている大学教授などは、学生という顧客がいて初めて生活が成り立つのです。ただし、顧客サービスにつとめて金銭を得ることと科学を実践することとは別の次元の話です。

■科学者の宗教に対する態度
・以前にも話しましたが、科学と宗教は根底から異なるものです。科学を実践する者として、その点を混同するようなことがあってはならないのです。
科学者でももちろん宗教を信じてもかまわないと思います。しかし、宗教を信じることと科学の研究は何の関係もありません。間違っても科学者と言う肩書きを利用し、特定の宗派の広告塔になってはならない。
・科学者は決して神秘主義に陥ってはならない。ただ見えるものだけを扱うこと。

■科学者の基本姿勢(おさらい)
・科学者なら、自分自らが実験台になるつもりで。真実を知るためなら、命を捨てる覚悟を臨むこと。
・一切の事実を包み隠さず明らかにすること。その結果社会が混乱を招こうとも、すべてをありのまま白日の下にさらす。社会によくある改ざんや隠ぺい等、科学者たる者、決してやってはならない。
・解らないことは素直に解らないという態度をとる。無理に答えを出す必要はない。時間は永遠にある。焦る必要は一切ない。研究とは地道に一歩ずつ歩んでいけばいいことです。なぜなら不可思議が尽きることはないから。科学の研究に終わりはない。未来永劫続くのです。
・科学は万能ではない。自然は人間ごときに開拓されるためにあるのではない。自然、宇宙の広大さに比べて、我々人類のなんと小さいことか。ある意味神をも超える(所詮神は人間の被造物に過ぎない)自然の偉大さに素直に敬意を払う。その謙虚な態度こそが必要であると思います。
・金や名誉のために政治当局や大企業に胡麻をする。名が売れているからといって、人よせパンダになり下がるような真似はしない。その甘えた態度が真実をゆがめることになるのです。

■競争から協調へ。すべてをオープンに。
・ノーベル賞競争に明け暮れるなんて浅ましい限りです。誰が発見しようが、日本がノーベル賞を取ったか取らなかったか、そんなことは科学の発展にはまったく関係ない。科学の成果は全人類の共有財産です。そのために研究成果は世界に向けてオープンにすること。
・ノーベル賞の趣旨を今一度確認してみてください。科学の目的は、あくまで人類の福祉への貢献です。 発明競争に勝つことなんか何の意味もない。この競争の弊害が科学の真摯な態度から外れる危険性を生むのです。ただの改ざん、誤魔化しでは済まない。そこを誤るといかなる天才科学者の発明も、人類を不幸に陥れる悪魔の道具になりかねない。戦争兵器すなわち殺人の道具に転嫁されるわけです。

■科学者の育成
・外国では、頭のいい(数学や科学に飛びぬけた才能を見出された)一部の子供たちを集めて高度な科学教育を施すことがあるらしい(いわゆる飛び級制度)のです。個人が自らの意志で何を学ぼうと自由ですが、それを行政機関が後押しするのはおかしいと思います。超エリートを育てて外国との競争力に打ち勝ちたいという思惑でしょうが、人格形成を目的とした教育課程は、何も理数系の才能だけを伸ばせばいいというものではありません。そういうエリート教育によって育てられた人間は、いわば政府に飼われた「知の奴隷」です。科学はあくまで自らの主体的意志によって実践するものです。

■最後に
・この「科学概論」はもちろん科学者ではない一般の方々にもお読みいただければと思って書いています。一般の方はもちろん科学の専門知識など、日常の生活では全く必要ないと思います。クォークの6つの種類、あるいはDNAの4つの塩基を覚えていても、あなたの幸せには何の役にも立たないでしょう。役に立つとしたら大学のセンター試験ぐらいしかない?そんなものにしか役立たないということは、そもそもどうでもいいことなのです。そう考えると受験勉強で覚える知識など(ごく一部の人(専門家を目指す者)を除いて)何の意味もありません。
青山がお話ししたい事はそういう知識のことではありません。本当にあなたが幸福になるための考え方。そして世界とは実はこういうものだということ。今まであなたが考えもしなかったことに対して、実はこうなのですと、新たな視点を持ってもらうこと。そして本当の科学とは、(その詳細な中身は別にして)こういうことなのだということを知ってもらいたい。そこにこそこの「科学概論」の目的があるのです。
もし疑問などありましたら遠慮なくお尋ねください。よろしくお願いします。

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