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国権機関


 諸外国の国家体制を見てみて、どこが最も理想的?
もちろん理想なんかないし、国によって(歴史的な)さまざまな事情があり、どこの国の体制が一番優れているかなんて評価などできません。ただ、青山個人としては、「アメリカ」の国家体制が理想に近いと思っています。
理由は、建国が西欧でさまざまな啓蒙哲学が起こった時期にあたり、建国に際して、もともとあった国家などの下地などがなく、新しく国をゼロから建設したこと。イギリスなどもちろん歴史はあるけれど、歴史がある分その国の独自性も持つ。現代においてまったく新しい国家を建設する際、もしイギリスを真似るならば、まず君主を立てるのか?ということになります。
アメリカの体制で徹底しているのは三権分立です。大統領以下政府各省の長官は議員の中からは選ばれず、大統領も議会に干渉することができない。(注)
その点、日本やイギリス、あるいはフランスなどはその三権分立が不十分だと個人的には思います。日本の場合、議員の中から大臣を選出するなど、国会と内閣は対立する関係ではなく直結する(癒着する)関係ですね。(補足1)
ただし、アメリカの政治体制も完璧ではありません。よく話に出るのは、大統領は州ごとに選ばれるため、国民の全得票数で勝っても、選挙で負けることがある。など。
(注) 大統領は教書と言う形で一応議会に意志をアピールしますが、議会を解散する権限などは持っていません。

■元首
 はっきり言って国家に元首は必要ないと思います。元首というと国王とか大統領が当たりますが、国家の基盤は国民だからいっそすべての国民を元首と位置付けた方が(国民自身が国を運営にする権利と責任を有するという意味で)実態に合うような気がします。元首などを設けると国民はそれに依存して、自ら責任をもって国の方針を決めるという自覚が弱くなる。とも考えられる。かもしれません。(補足2)

■議会
 たとえば国王でも大統領でも、あるいは総統でも、一人の人間に国家の全権を与えて、もしその人間が判断を誤ったらどうなります?一人の人間のミスが国民に大損害をもたらすかもしれません。人間は間違いを犯す動物です。その間違いを他の者、あるいは周りの者が修正してあげる。そうすれば誤りを未然に防ぐことができるかもしれません。そのために多くの人間が参加して、討論を経た後国の方針を決定する議会が必要なのです。
議会に全国民が参加するわけにはいきませんので、当然議員は国民が選挙で選ぶのです。その国民の代表である代議員が国の方針を討論によって決める。つまり議会(国会)は「日本国憲法」にあるように国権の最高機関なのです。(補足3)

■行政府
 行政つまりお役所は、国民にサービスを提供するいわば店舗みたいなものです。そのかわり国民は税金(サービス料)を支払うのです。
ただし独占企業です。国民は他からそれを買うことができません。となりの国の方がサービスがいいからといって、隣国からサービスを受けようと思ってもダメです。するとその価格が適正か?評価、判定する監査機関が必要です。諸外国の状況やその他の事情、あるいは消費者である国民のニーズに沿ったサービスを提供しているか?などを適正に評価する必要があります。
以下評価項目として、
・法律に則った事業運営を行っているか?
・予算配分は適正か?
・議会との関係は適正か?利害による癒着がないか?
・民間との関係は適正か?賄賂などもらっていないか?
・行政長官および各省の長官(いやいやすべてのお役人)は適任者が配置されているか?無能な者がコネなどで職についていないか?
・行政官(役人)はまじめに仕事に取り組んでいるか?給料泥棒(税金泥棒)になっていないか?
・国民のニーズに応えているか?施策の妥当性は?アウトプットの評価。
・経費の無駄はないか?
について厳しく監査される。ということです。
つまり民間企業ならサービスが悪ければ当然顧客から逃げられ(別の店に客をとられて)倒産するところ、独占だから倒産しない。だから厳しい評価が必要なのです。

■裁判所
 文字通り、裁判の判決を下すところ。一つではありません。一般に裁判所は下級裁判所、高等裁判所、最高裁判所等があり、下級裁判所の判決が不服ならば、上級の裁判所に控訴できる。というのが常識です。特に三段階の構成になっている三審制度が一般的です。ただ勘違いしないでほしいのは各裁判所は組織的に独立しており、下級裁判所は上級裁判所の管理下にあるのではなく、上級裁判所の支配や干渉を一切受けない。何らかの命令や指示を受けることもない。また裁判官すなわち判事はすべて平等の権限を有する。ということを覚えておいてください。それが司法の原則です。
また訴訟の種類で裁判を分類すると以下になります。
@民事裁判
A刑事裁判
B違法行政審判
C違憲立法審判

■監査機関
 一般的に国権機関の関係は「三権分立」ですが、ここではさらに「監査機関」を加えて、「四権」を考えてみました。この監査機関は国民に最も近い立場として、国民の「目」の役目を果たすのです。
 監査機関は、それぞれ議会、行政府、裁判所の各機関が憲法に従い機能しているか、ひいては、上記立法(議会)、行政、司法(裁判所)の三権の力関係がバランスよく保たれ、どこかとどこかが癒着することなく、正常に国家体制が維持されているかを見極めることがその目的です。
また、その監査機関は国民から監視されるのです。

以上の三権、あるいは四権が、それぞれの役割を適正に果たし、国民はそれを注視する。これが国民主権の意義です。図59「三権分立と監査機関」参照。

■権力への対抗措置
 国家の主権者はあくまで国民です。従って権力を握る国家機関が力でもって国民を抑圧することがないよう、憲法があり、この三権分立があり、また監査機関の働きがあるのです。それに加えて各国家機関の長の力を制限するために、最長期間その地位に就くことができる任用期限を設けることも有効です。
【憲法条文例】 首相、行政長官、最高裁判所長官等、組織の最高責任者は、別途任期を定め、任期を超えて当該地位に就くことは認められない。
 地位の高い者が権力の座に長く居座ることが政治の腐敗を生むのです。現にアメリカ大統領は3選が禁止されています。つまりどんなに国民から人望厚い人でも、最長8年が限度。

 国権機関は国の骨幹ですから、その制度は憲法で明確に規定する必要があります。ただし、細かいことは関連法に委ねる方が妥当です。憲法はあくまで基本的基準を示すだけに留める。それが時代が変わっても、国の状況が変化しても、変わらない憲法の威厳です。

(補足1) 日本の場合、国会も政府も与党が一元的に掌握しているため三権分立など名ばかり?のもの。つまり与党対野党の対立構造。したがって憲法でいう国会、内閣、裁判所の牽制構造は有効に機能していない。
日本では大臣は議員から選ばれます。優秀?な官僚の上にバカ?な大臣がいる構図。議員は選挙で選ばれているという自負があるため役人を見下す。役人は大臣の言うがまま、何一つ逆らえない。役人は大きな仕事ができずせっかくの能力が生かされていない。

(補足2) 政治の体制で共和制というものがあります。たとえば大統領を国民が直接選ぶ。国王のように世襲制ではなく、あくまで国民が支持した一人の人間に全権を与えるというものです。しかし国民はその一人の人間の何から何まで(将来これこれと言った事態が生じたならば、このように判断することも含めて)知り尽くした上で支持した訳ではありません。そんな一人の人物のすべてを知り尽くすなんて親子、夫婦でも不可能ですよ。だいたいこういう人物であろうということで一応(他にたまたま適任者がいなかったから)選び出したに過ぎない。だからその判断が誤ることも、将来にわたってないとは言えないのです。あるいはその正体は、国民をないがしろにする独裁者かもしれない。その邪悪な本性を隠して選挙の時だけ芝居をして国民をだましていたに過ぎない。そんな嘘や芝居を国民一人一人が見抜くなんて不可能です。それゆえに全権委任なんていうものは、一旦認めたら痛い目に遭う。

(補足3) 日本でもイギリスでも、あるいはフランスでも法律は議会の審議を経て成立しますが、法律になる前の法案は、主に政府(省庁)から提出されます。(議員が提出することもできる) フランスでは政府から提出され法案が優先されますから、議会の権限は極めて低い。これでは「国権の最高機関」などとは言えません。(フランスの最高機関はそもそも大統領だし、イギリスは君主です) それに対してアメリカの場合、大統領ほか政府の各省庁からは法案を提出することができません。あくまで議員が提出するのです。

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