ここからは国際機関、すなわち国連のあり方について考えてみましょう。ただし、ここで話していることは、現在の国連の機能ではありません。あくまでもこうあるべきだという一つの提言です。 とりあえず国際機関は世界の国々を束ねる組織体という認識は一致していると思います。 注意してほしい事、国際機関は決し国家の上にあるのではありません。国際機関が参加各国を支配し管理しているわけではないのです。各国にとって最高の権力機関は国そのものです。国際機関は各国の主権を超えることができないのです。 ゆえにある一つの国が国際機関に参加しようが脱退しようが自由です。その国の国民が、国際機関なんかの命令に従えるかと言ったら従わなくてもいい。国際機関が無理やり従わせることなんかできません。 国際機関に各国をどうのこうのする強制力などない。それは個人参加の同好会みたいなもので、会の規則が気に入らなければ止めればいいんです。止めたって誰も文句は言えません。それと同じです。 ■国際機関の使命 【憲章案】 国際機関とは一国では解決できない国際的な問題について、各国と協議を図りながら解決に向け、改善を推進するために組織された世界各国を対象とした機関である。 国際機関は、地域の国同士が何か協定を結んで共に活動する、たとえばASEAN(東南アジア諸国連合)やNATO(北大西洋条約機構)あるいはEU(ヨーロッパ連合)などとは違います。地域を限定しない全世界(地球全体=今のところ他の惑星はなし)が対象です。ただし全ての国が参加するとは限らない。参加の強制力などない。参加するかしないかは、各国の主権、すなわち国民が決めることです。 国際機関が目指す究極の目的は以下の通りです。 ・(国内の紛争も含めた)世界平和の実現 ・貧困の撲滅 ・人類の普遍的な幸福の実現 ■国際機関の組織 (図64「国際機関」参照) 今現在世界が抱えている問題の解決にあたり、目的ごとに専門の機関を構成する。というわけで、平和維持の問題など全世界に関わる最も大きい課題の解決のための組織として、「世界平和推進機構」、「国際経済調整機構」、「相互援助推進機構」などが考えられます。 この機構というものは、総会に準じる国際機関の最大の組織体であり、全加盟国が参加し強い権限を持つ。 (1)世界平和推進機構 まず最大の世界的な問題は、国際紛争、国内紛争、治安維持すなわち戦争と平和の問題です。 組織の下には平和維持軍があります。この軍をどう動かすかは、その上の軍事調整委員会が決定し、その上位機関である「安全保障委員会」、「世界平和推進機構」の総会が承認します。 この○○委員会というのは、現在の国連の理事会とは違い、主要国(理事国)が特権的に何かを決めたり、あるいは拒否権を発動して否決させたりと、大国のゴリ押しに他の国が従うというものではなく、当事国、関係国が同じ権限で問題の調整に当たるための組織です。 平和維持、戦争回避の問題は次のコラムでも話します。 (2)国際経済調整機構 これはEUのような通貨を統一したりして経済の自由化を図るものではありません。経済をどれだけ自由にして、どれだけ規制するかは各国の方針によって決まります。それを国際機関の強制力によって一律にすることはできません。 この機関の目的は、経済のグローバル化にともなって生じる経済格差を調整することにあります。経済自由化ともなれば力のある先進国が勝り、その資本力をバックに経済力の弱い発展途上国に不当な要求を突きつけてくる。それを阻止し、格差をできる限り少なくすることを目的としています。地理的な要因、あるいは歴史的な背景等、国によって経済発展の状況が異なるのは当前です。資源も(国内が安定しないために)技術力もない発展途上国はどんなに頑張っても先進国にはかないません。ただ経済を自由化するだけなら、国際機関など不要です。 (3)相互援助推進機構 名前の通り国同士が助け合う。それを実効上推進する。簡単いうと100の国のうち1国が窮地に陥ったとき、残りの99国ができる限り手助けすること。人間同士の助け合いと同じ。困ったときはお互い様という考え方の上に成り立っています。国が窮地に陥る要因として、戦争による国内秩序の崩壊、自然災害等によるライフラインの破壊、経済危機による貧困問題、物資の不足による国民生活の窮乏など。 以上の3つの課題よりも多少問題性が低いか、または緊急性がなく長期的に取り組まなければならないものとして、機構より小さな組織体である協議会を母体としたもの。 (4)食糧問題協議会 食料の不足による大量餓死などの悲劇を未然に防ぐために、食料を長期的に確保し、その推進にあたる。 (5)医療問題協議会 先進医療の話ではなく、医師不足、医薬品の不足、病院等の施設の不足の解消を目指す。ようするに一般の人が普通に医療を受けられない事態を回避する。 (6)人権問題対応協議会 人道上の問題、差別の問題、宗教の問題、教育問題、労働条件の問題等、人権に関わる問題の解決に向けて取り組む。 特に人権監視や学校教育の推進。 (7)環境問題協議会 これについては他に較べて緊急性は低いものの、長期的な対応が必要であることから、それなりの組織を立ち上げて、それ相応の予算をつぎ込んで対応していく。特に科学的な立場から提言する調査機関が必要。 課題としては、土地開拓、森林伐採、海洋汚染、大気汚染、生態系破壊など。 他、あった方がいいものとして、 (8)科学技術の交流を目的とした専門機関 科学研究の推進は一国では不可能。各国の協力、情報交換が必要です。得た成果は一国にとどまらず、全世界に広げましょう。 他、なくてもいいものとして、 (9)文化、スポーツ国際交流を目的としたもの。現在の国連ではUNESCO(ユネスコ=国際教育文化科学機構)にあたるもの。 そんなことは国同士でやってください。わざわざ国際機関が関与することではありません。 特にどうでもいいと思うものに「世界遺産」というものがありますが、何をもとに世界遺産を決めているのかよくわかりません。 単なる観光事業による経済効果(誘致合戦)にしか思えません。そんな金儲けのための事業に国連が加担する暇があったら、もっと深刻な問題に取り組んだらどうですか?何しろ予算が限られているから。 ただし教育は必要です。上記「人権問題対応協議会」等と連携しながら、(特に発展途上国において)学校などの施設建設、および教育者等の育成を推進して、世界中の子供たちが教育を受ける機会を得てほしいものです。 ■現在の国連の課題 現在の国連の問題は何でしよう。上記、平和、経済、援助の問題にしてもうまく機能していないように思えます。なぜでしょう。 それはそもそも国連の力が弱いからです。上で話した通り国連は国の上にあるのではありません。力関係的に見て国と国連は同等です。だから強い権限で命令を下すことはできない。法律と違って相手が従わなくても罰則を与えることができない。 さらには金がない。金がなければ組織は成り立ちません。金がないと何もできないのです。だから国連は金がある先進国に頼る。すると先進国は、その見返りを求めてくる。俺たちのいう事を聞けと。金がない国連は逆らえなくなる。 たとえばこうです、金のある先進国が、まず貧しい国々を援助しなさいといわれたとしても、「どうして金を出さなければならないんだ。第一見返りは何もないじゃないか」。一方的に金を払わされる先進国は絶対に認めない。そんなことをしたら国民が怒るでしょう。「俺たちの税金を貧乏人のために使うのか?」って。それを認めたら政治家は次の選挙で落選します。 国連が実効的に機能してない理由は権限がないからです。実質的な活動は超大国とそれにつき従う同盟国が行うのです。それは国連の権限を超えた存在のため、国連の権威は失墜します。アメリカを中心とした「多国籍軍」は国連とは別。もし国連主導なら「国連軍」になるでしょう。 このように国連が動けるとしたら超大国の言いなりになるしかない。動けないとしたら超大国側に出し抜かれて、国連の存在など無視される。 超大国といわれている国も国際協調性など期待できないのです。だったら国際機関なんかいらないんじゃないのかと思いますが、何とか憲章の精神に則り、実効性のある活動が可能な頼りになる国際機関にできないか、考えてみましょう。 ただし、各国を支配する世界政府は不可能ですよ。それはまた別のコラムで話します。 国際機関が国々の主権を超える権限は持たずに、目的を達する方法ないか? 現在の国連参加国は、一部の超大国と大多数の発展途上国(貧しい国々)という構図になっています。超大国は金はあってもごく一部です。その超大国から支援を受けるべき貧しい国は沢山あります。その国々が団結して超大国に対抗するのです。もちろん国際機関の場で。 国際機関が本来的に、金の力で動くのではなく、国々を平等に扱うなら、多数の国が参加している発展途上国連合の力は無視できません。この力をバックに国際機関は権限を発揮して、超大国に対して(半強制的に)、支援が必要な貧しい国々への援助を要請するのです。このとき発展途上国連合には今現在支援が不要な国も参加した方がいい。いずれ自分たちの国も支援が必要になるのだから。 発展途上国は一致団結して、超大国に立ち向かう。金の力ではなく数の力で相手を圧倒するのです。ただし、あくまで国際機関の場で。 その際超大国は姑息な手を使うかもしれません。発展途上国の一部に金を与えて買収するのです。そして連合内に仲間割れを起こすのです。仲間割れは力を半減させます。それが超大国の狙いです。その時そうはさせじと活躍するのが国際機関です。 国際機関の力をもって超大国の悪事を公の下にさらし、国際社会に訴えるのです。たちまた超大国へは世界中から非難の声が上がるでしょう。 超大国がとる手は一つ。国際機関を脱退するのです。 止めるのは自由。しかしそうすると国際社会から仲間外れにされる。どんな超大国でも一国だけでは生きてはいけない。一国だけで全世界に太刀打ちできない。超大国は世界に負けるでしょう。そしていずれその超大国も一国で生きていくよりも国際社会の中で世界と協調した方が遥かに賢い選択であることを知ることになるのです。(補足1) いかなる国においてもあらゆる面で国際機関に参加することはもはや必須です。なぜなら世界は一つですから。(補足2) (補足1) 後のコラムで話しますが、超大国もテロの問題に苦心していますね。もはや戦争への力による勝利は不可能。ここで各国と足並みを揃えることがどうしても必要。自国主体ではなく、あくまで国際機関の主体でね。 (補足2) 昔のような鎖国は現代では通用しない。鎖国をすれば文化も技術も発展しない原始時代のままということになる。数百年たてば猿と人間ぐらいの差ができる。一部の人(愚かな独裁者)はそれでもいいかもしれない。ただし、多くの国民はそんな馬鹿と一緒にされては困る。
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