では、宇宙はどうやって誕生したのでしょうか?すべてが一点から始まったのでしょうか。そこはエネルギー密度が無限大でブラックホールの特異点と同じです。そこでは物理学の理論が破たんします。したがってそれ以前に何があったのか我々は知るすべがないのです。 ということは宇宙がなぜ存在するのか解らないまま、我々は生きているという空しい状況になるのです。もしも宇宙が完全な”無”から誕生したのなら、そこに宇宙を誕生させた原因が見出せません。科学の限界です。正に神の存在を仮定するしかないのです。(補足1) 宇宙は完全なる一点から始まった。その一点に全てのエネルギーが押し込められていた。しかし量子力学的に言って固定された一点を設定することは原理的にできません。不確定性原理により位置が確定されず、常に”ゆらぎ”を持っているからです。もしも量子力学が正しければ、完全な一点から宇宙が始まることはない。(宇宙全体が一点でしかないなら、その一点を観測する主体も存在しえない。従って不確定性原理が成り立たない。ならば完全な一点など存在せず、そこに大多数の要素を含んでいる) つまり何らかの原因があって宇宙は誕生した。完全な”無”から宇宙が生まれたのではない。即ち神の力を借りずに宇宙の誕生を説明できるかもしれないということです。(説明) (説明) 特異点について 宇宙は無限大の密度を持つ一点(特異点)から始まったというのは一般相対性理論から導かれる結論です。(量子力学ではない) ホーキング(イギリスの物理学者)らの「特異点定理」によって、時空がどのような形をとったとしても、内部に正のエネルギー(引力)が存在するなら、その中に必ず「特異点」を含むことが証明されています。すなわちブラックホールや全宇宙は特異点を持つのです。しかし身近な物質を含めて正のエネルギーを持つ物は無数に存在します。周りの空間は特異点だらけです。密度が無限大になっている場所はいたるところにあります。 特異点は密度が無限大です。時空も無限に引き伸ばされます。するとそこで何が起きても、起きていないことと同じになります。つまりそこで何が起こっているのか知りようがないのです。物理学の限界です。宇宙のはじめは何があったのか?何が原因で宇宙が誕生したのか永遠に分からないということです。 一部誤解していますが、宇宙が一点から始まったからといって、すべてが一つだったとは限りません。一点に無限の要素を含んでいるのかもしれません。つまりそれぞれが一点にあるのです。(補足2) しかしそれを確かめようがありません。そこで今度は量子力学的に考察してみましょう。 その特異点があったとしてもそれが空間の一点に固定されることはない。量子力学の不確定性原理に反します。ブラックホールや泡のように存在する特異点は、周りから見ればそこで物理学が破綻するのではありません。しかし(ビッグバン以前の)宇宙全体が特異点の場合はどうでしょう。その場合特異点の外はありません。どこから眺めればその点が固定されていないことが分かるのか?それは親宇宙(図35「宇宙誕生」参照)です。 「宇宙は無から生まれた。」というのは、「この宇宙が誕生する前は無だった。」という当たり前のことを言っているだけのことです。生まれる前には存在しません。当たり前です。(補足3) ここからはあくまでも仮説です。 もしこの宇宙が我々にとって理解できるものであり、宇宙とは何かに答えられるのであれば、なぜ宇宙が誕生したのかについても(あくまで科学的に)思いを巡らせることが許されるのではないかと思います。 ・仮定1:この宇宙が誕生した原因が存在する ・仮定2:この何らかの原因がまず存在して、そこから宇宙が誕生する過程は、ある決まった物理法則の原理に従う。その物理法則は、現在の宇宙にも適用される そこから推測すると、この宇宙が存在する前に原因があった。その原因が存在した場はこの宇宙を生んだ親宇宙というべき存在の内部である。そして親宇宙にも我々の宇宙(子宇宙というべきか)にも共通する自然法則があるということです。 結論:宇宙には親があり、宇宙は宇宙から生まれる。つまりこの宇宙を生んだ親宇宙がある さらに、親宇宙も子宇宙も同じ自然法則に従う一つの宇宙に変わりがないことから、宇宙は全て平等であること。 従って、この宇宙を生んだ親の宇宙にもそれを生んだ親宇宙があり、さらにその宇宙を生んだ宇宙があり、それは無限に続く。 さらに、この宇宙も親宇宙と同等であるから、この宇宙から生まれる宇宙(孫宇宙と呼ぶべきか)も存在する(可能性がある)。 さらに、この宇宙から生まれた宇宙もその子宇宙を生む。それはまた無限に続く。 以上あくまで仮説です。 では、どのようにして宇宙は生まれたのか?その前に宇宙とは何かについて改めて考えてみたいと思います。 ・宇宙を一言でいうと、閉じた空間の次元。(補足5) 宇宙は1次元以上であること。イメージとしては輪ゴム。2次元ならテニスのボール。それがエネルギーを受けて振動しています。輪ゴムなら輪の方向と垂直の方向に揺れたり(横波)、ボールならへこんだり膨らんだりして波打つように。 ・宇宙にはミクロ宇宙とマクロ宇宙があり、マクロ宇宙とは我々の住むこの3次元宇宙もその一つ。その中に物質や素粒子、我々人間を含めた生物が存在する。(宇宙によっては物質や生物が必ず存在するとは限らない) ・ミクロ宇宙とは、マクロ宇宙内に存在する極めて微小なスケールの宇宙であり、マクロ宇宙内の素粒子よりも遥かに小さい。このミクロ宇宙が(極まれに)膨張して、マクロ宇宙になる(こともある)。(大概ミクロ宇宙の寿命は極めて短く、マクロ宇宙内にて誕生しても、瞬時に消滅してしまう) ただし、ミクロ宇宙の膨張はその親宇宙であるマクロ宇宙からは観測されない。 ・マクロ宇宙内では、時間の存在を確認できる。 ・マクロ宇宙同士は因果関係がない(注1)。したがって宇宙間を行き来することはできない。 (注1)だから宇宙というのです。もし二つの宇宙が因果関係を持ちえたら(別の言い方で行き来が可能なら)、一つの宇宙とみなされます。したがって我々はこの宇宙の外には脱出不可能。宇宙全体がブラックホールであり、その中に閉じ込められているのと同じ。 さて、マクロ宇宙(親宇宙)からミクロ宇宙が生まれ、それが成長してマクロ宇宙になる過程を図35「宇宙誕生」に示しました。分かりにくい資料で申し訳ありません。(図35では、参考として、「他の宇宙」、「時間とは何か」、「時間と空間の関係」なども掲載しています) 詳しく(それほど詳しくはない)は、この図35を参照願いますが、簡単に要点だけ書くと、以下のようになります。 ・第1段階:親宇宙となるマクロ宇宙にミクロな宇宙(最もシンプルなモデルは1次元の輪ゴムを連想していただければ。ただしその大きさは素粒子よりもはるかに小さい)がランダムな揺らぎ(真空のエネルギー)から発生する。(注2) ミクロ宇宙である(1次元の)輪ゴムがエネルギーを受けて振動を始め、輪の方向と垂直な方向に揺れ始める。 (注2) 量子力学的に言うと、何もない空間は完全なエネルギーゼロの状態ではない。わずかながらもエネルギーの揺らぎを持つ。 ・第2段階:ミクロ宇宙の大きさ(広がり)が突然一気にゼロに収束する。(補足6) するとミクロ宇宙に存在していたエネルギーが一挙に集められ、とてつもなく高いエネルギー密度になる。ただし無限大ではない。 ・第3段階:エネルギー密度が極限になり、輪の方向と垂直の振動が最大限になると、次元の数が増える。1次元から2次元へ、そして3次元、4次元と増えていく。 ここでポイント、なぜ我々の宇宙は3次元であり、36,582次元ではないのか?別に36,582次元の世界でも生命体は存在できる。 答え、次元が増える段階で、宇宙が急激に膨張するから。これをインフレーションと呼びます。 従って100次元、1,000次元などというところまで次元は増えない。つまりミクロ宇宙においては、2次元、3次元、そして4次元ぐらいしかないのでは?たまたま我々の宇宙は3次元だった。ただし、2次元、4次元になっていたかもしれない?(補足7) それは全く別の世界です。ただし、36,582次元にはならないと思います。 ・第4段階 宇宙はインフレーションを起こして急激に加速膨張する。(補足8) さて、インフレーションとはどのような現象でしょうか? 真空のエネルギー(その正体が不明のためダークエネルギーとも呼ばれています)によって宇宙が指数関数的に膨張する現象です。(補足9) 真空のエネルギーは空間そのものがもつ揺らぎで、隣の空間の揺らぎと作用して、空間を押し広げる、いわば斥力として働きます。素粒子同士の力はほとんど引力(一部斥力もあり)なのとは性質を異にする。(補足10) ただしこの急激な膨張を親宇宙側では一切観測できません。いわば裏側で起こった事象です。 その際一点(正確には一領域)から始まった物質的なエネルギーの揺らぎが広がり、それが相互作用することから、とても小さな空間(もちろん3次元)で一部熱平衡状態が実現されます。 そのまま宇宙がインフレーションをした際、その熱平衡状態の部分が切り離されて別の宇宙になる。その部分が成長して我々の住むこの宇宙になった。 ここで注意、ミクロ宇宙がインフレーションを起こして巨大化したものを母宇宙といいます。その母宇宙からインフレーションした際分離したのが子宇宙、すなわち我々の宇宙です。つまり我々の宇宙自身がインフレーションを起こしたのではないということです。 では、なぜ母宇宙がインフレーションを起こした際、熱平衡状態にある領域が別の宇宙(子宇宙)として分離するのか? 答え、熱平衡状態で関係を持った領域がまったく分離されてしまうと(すべての関係性が失われてしまうと)、因果律が保てなくなるからです。 その際、同じ母宇宙から誕生した兄弟宇宙が無数(極めて多い数ではあるが、決して無限大ではない)に誕生する。(補足11) 我々の宇宙と同時に誕生したそれらの兄弟宇宙(すべての兄弟宇宙は母宇宙および我々の宇宙と同じ3次元宇宙)は我々から観測することはもちろん、その宇宙に行くことはできない。 我々の宇宙は誕生後高温高密度の状態であり、それが膨張(補足12)とともに冷えてゆき、現在の宇宙まで進化を遂げたというもの。 ここで疑問、宇宙には親があり、その親宇宙にもそれを産んだ親がいる。では、最初の最初の宇宙、大もとの宇宙はないのか?答え、宇宙のもとを辿っても永遠に尽きることはない。親子関係に終わりはないのです。大もとの宇宙なんてない。もし大もとがあったら、その宇宙はどうやって出現したのか?もはや神を持ち出す以外にないのです。神を持ち出せば科学は終わりです。(トマス・アクイナスの論法(「神の存在」参照)) ここで注意、現在の宇宙が誕生した要因が親宇宙にあるなら、親子の間で因果関係がある。とみてはいけない。親は子が誕生する要因ですが、宇宙の中で人間が認識でき得る”因果律”はその宇宙内で完全に閉じています。つまりこの宇宙が誕生した要因を別の宇宙である親に求めることはあっても、それ以外の因果関係は、親子の間では一切ありません。つまりこの宇宙で何が起ころうとも、親宇宙に影響を与えることはない。また誕生以降の子宇宙に、親宇宙の事象が作用を及ぼすことはない。(ミクロ的(量子的)には関係を持つかもしれない。ただし、その関係性を定量的に確認することは「不確定性原理」によって不可) 勘違いしないでほしいことは、宇宙の親子は人間のような親子関係とは違います。親の積んだ実績を子が受け継ぐわけではないのです。宇宙の親子は完全に独立しています。子宇宙が親宇宙を引き継ぎ、それによって宇宙は子、孫と世代を経るに従って、進歩、発展していく。あるいは成長していく。人間のように。子は親よりも進化している。違います。そもそも宇宙とは時間と空間の場。時空以外何もないのです。そこに意味などありません。時間的にも親と子は切れています。宇宙の外に時間などありません。親宇宙の誕生は子宇宙の誕生よりも時間的に過去の出来事。というのは間違いです。親と子の間には(意味のない)違いしかなく、そこに優劣もありません。(補足13) だから宇宙は永遠に続くのです。 人間原理 自然界、生物界、地球、そしてこの宇宙を観察して、こう思ったことはありませんか?なぜこの宇宙(または地球)は、こんなにも生命、あるいは我々人間にとってあまりにも都合がよくできているのか?生命の誕生、遺伝子の働き、原始的な微生物からどうやって知的生命まで進化できたのか?偶然とは思えない。正に神の存在なくしては説明不可能。いいえ、違うんです。もしこの宇宙以外にも宇宙があると仮定したら、この宇宙こそが、人間にとって存在する上で最良の宇宙なのです。人間だけではありません。他の生物、原始的な単細胞生物にとっても、この宇宙は最良なのです。逆に他の宇宙が存在するなら、その宇宙では(人間にとってもアメーバにとっても)最悪です。(補足14) ただし、人間にとっては最悪の宇宙でも、そこに生まれた生命体にとっては反対に最良なのです。まあ、その宇宙に我々は決して行けませんが。つまり、この宇宙がたまたま人間にとって都合が良かったからこそ、人間が誕生した。それ以上の理由は何もない。このような考え方を「人間原理」といいます。 この宇宙において(人工物ではなく)自然に成り立っているものは、すべて精緻の極み(細かさの極限)なのです。人間には決して真似などできません。人間の認識の限界を超えているからです。従って人間が意識を持って宇宙を眺め、意識的に宇宙に働きかけを行おう(宇宙(現実)を思うがまま変えたい)としたとき、その脅威に圧倒されるのです。そしてそこに神を見出すのです。(神は決して観測されませんが) 神、あるいは宇宙、自然にとっては、この宇宙の出来事はすべて必然ですが、無限者、絶対者ではない人間にとって、すべては偶然なのです。宇宙はただあるがままにあるだけなのです。 宇宙の本質(仮説) 以上まとめると、 (1) 数量的無限(空間的無限)(注1) ・宇宙は我々の宇宙つまりこの宇宙だけではない。他にも無数に存在する。その数は無限。 ・従って、すべての宇宙に存在するエネルギーを合計すると、その量は無限。 ・使用できるエネルギーは無限に存在するから、エネルギーはいくら使用しても減らない。即ち熱力学第二法則から、全世界(無限に存在するすべての宇宙)のエントロピーが無限大に発散することはない。 (2) 因果的無限(時間的無限)(注1) ・宇宙は宇宙によって生まれ、宇宙は宇宙を生みだす。その因果関係は永久に遡り、無限に続く。 ・全ての宇宙は(この宇宙も)、他のすべての宇宙と関わりを持つ。 ・ただし、マクロ的因果関係(人間が認識できるような作用反作用の関係(因縁))を持つわけではない。(量子力学が正しいならば) (3)個々の宇宙(注2) ・一つ一つの宇宙(我々の宇宙を含む)は、観察し得る有限の時間と空間を持つ。 ・我々が存在する宇宙において、時間と空間が有限だから我々は現実を認識できる。(量子力学が正しいならば) ・つまり一つの宇宙は因果律的に閉じており、我々はこの宇宙から他の宇宙に行くことはできない。 ・従って親の宇宙で蓄積されてきたことが、まるまる子供の宇宙に引き継がれることはない。 以上がもし正しいのなら、自然界に神の存在を仮定する必要がない。(補足15) (注1) 我々が認識できる空間や時間はマクロ宇宙でのみ存在可能。つまりこの宇宙の外では、時間も空間も存在しない。 (注2) マクロ宇宙のこと 最後に述べたいことがあります。宇宙は我々の想像を遥かに超えるほど広大にして、時間的にも永遠です。未知の事柄は沢山あります。宇宙の誕生と言ってもこんな単純なことではないかもしれません。宇宙の謎は永遠に尽きないと思います。(補足16) ただし、どんな場合にも科学は客観的事実(観測結果)に基づかなければなりません。神を持ち出すまでもなく。(補足18) (補足1) なぜビッグバンが起こったのか分からないから、ゆえに神は必然的に存在する。という態度は科学的ではありません。分からないなら調べるのです。それが科学的態度です。神を持ちだすのは科学の放棄です。その前に神とは何ですか?神を明確に反証可能なものとして定義する必要があります。科学の放棄は幸せの放棄です。 (補足2) この一点にすべてがあったというのは、例えるなら籠にたくさんの鳩を押し込んで、扉を開けたとたん一斉に鳩が飛び立つ様子です。これがビックバンです。すべてが何の要素もなく一つなら、原因が存在しないのに結果(ビッグバン)があるかのごとくです。 (補足3) この宇宙が誕生する以前には空間も時間もありませんでした。そこで誤解されるのが、全くの無の状態において、量子力学の揺らぎからプラスのエネルギーを持った粒子とマイナスのエネルギーを持った粒子が「対」として生まれるというもの。(対生成) 平坦な空間(エネルギーとしてはゼロの空間=これわし”真空”という)においては揺らぎが発生します。しかし空間そのものが無ければ、揺らぎもありません。従って全くの”無”からは、何も生まれないのです。(補足4) つまり、揺らぎがあるなら、そこに空間が存在しなければならない。空間が存在してこそ揺らぎがある。空間が存在するなら、そこに宇宙があるということ。空間や揺らぎが存在する場こそが一つの宇宙と考える。それが親の宇宙です。子宇宙とは違います。親宇宙は子宇宙を生みだす要因です。”完全な無”と”真空”は意味的にまったく違うのです。完全な無では、空間も揺らぎも存在できない。もちろん時間もありません。 ただし親宇宙と子宇宙との間に因果関係、引き継がれるものはありません。仮に親宇宙において進化の結果知的生物が誕生し文明が築かれたとして、その文明の恩恵を子宇宙は引き続ぎません。親宇宙と子宇宙の間にある共通の時間など存在しない。つまり宇宙の外に時間はない。一つの宇宙にはそれぞれまったく異なった(他の宇宙とは関係のない)独自の時間が存在します。宇宙がなければ時間など存在しないのです。また親宇宙の子宇宙の間には空間もありません。つまり宇宙の外に空間はない。 (補足4) もしも完全な”無”から宇宙が誕生したのなら、手品師の帽子から人間でも地球でも太陽でも何でも取りだせます。ステッキの先でビッグバンだって起こせる。無論そんな試しはありません。世界は自然法則に従っており、起こることと起こりえないことがあるのです。 (補足5) 空間の次元は閉じている必要がある。なぜなら突然空間がそこで終わっていたとしたら、その先はどうなっているのか?それに対して、時間は閉じている必要がない。時間が閉じているということは、いずれ過去へ戻るということを意味している。それは一種のタイムマシンであり、人間が意識的に過去へ戻れるならば、それは矛盾を引き起こす。(図14「タイムマシン」参照) つまり時間は永遠に開いている。無限の可能性を持っている。ということです。 (補足6) なぜ、ミクロ宇宙の大きさ(広がり)が突然一気にゼロに収束するのか、その原因は何か?それは量子力学的にわからないと答えるしかない。1次元などの輪ゴムでは、この急激な収縮が起こりえるが、多次元構造の素粒子などは次元が固定(安定)しているために、そのようなことは起こりえない。 (補足7) もしかしたら宇宙は3次元しかないのかもしれません。つまり2次元ではインフレーションが起きない。4次元に達する前にインフレーションを起こす。その辺はまったく判りません。 (補足8) 宇宙誕生は基本的にビッグバンによって始まる。それはイメージとして一つの素粒子が無数の粒子に分裂するような現象である。分裂した粒子同士は同じ波形を持っている(同期している)ため、引力によって引き合う。それに対して真空の波はまったくランダムなために同期することはない。したがって斥力となり空間を押し広げる。 (補足9) インフレーションはなぜ光の速度を超えて膨張可能なのか?それは相対性理論に反するのではないか?相対性理論によれば空間内を移動する速度は光速を超えることができない。インフレーションは、空間内の移動ではなく、空間そのものの膨張であるから相対性理論と矛盾しない。 風船を思い浮かべてみて下さい。風船の表面が我々が観測できる3次元空間です。相対性理論に従えば、風船の表面では光の速度以上に物体が移動することはできません。しかし風船そのものが膨らむ(大きくなる)スピードは、光の速度に規制されません。(図35の参考「宇宙の急激膨張(インフレーション)」参照) (補足10) 素粒子論における力の作用は波として伝播される。一つの発信源から出た波は互いに干渉して打ち消し合い引力として働くこともある。つまり宇宙の波あるいは物質の発生源は一点(完全な一点ではない)であったといえる。(一領域から宇宙は始まった) それに対して真空の揺らぎによる波の作用は、その波の発生源は個々であり、しかも全くランダム(無関係)であることから、干渉は起こらず、すべて空間を広げる斥力として働く。 (補足11) 科学では無限という数は扱えない。それは理論の破たんを意味する。従ってどんなに大きな数でも無限大とはしない。無限を扱うのは科学ではなく数学である。 (補足12) この膨張はインフレーションのような急激な膨張とは異なり、光の速さを超えることはない。つまり我々の宇宙において誕生から今日まで続いている光膨張である。それは一つの宇宙の内部で起こっている現象である。したがってインフレーションのようにこの膨張から新たな宇宙が誕生することはない。 (補足13) 時空というものもそもそも人間が勝手に創った概念です。我々が認識しているものも本当に存在しているか確証はありません。それは存在ではなく単なる現象かもしれません。さらに我々が認識しているのは今現在でしかなく、過去や未来もあるのか?あると思い込んでいるだけかもしれません。 これは仏教でいう「世界は”空”」という思想です。宇宙には意味も目的もない。進歩も発展もない。だから親宇宙子宇宙に差異はないのです。詳しくは後出。 (補足14) 他の宇宙が存在するとしても、それを我々が(夢の国のように)勝手に想像することはできません。その宇宙にも生命体にとって障壁となる自然法則があるのです。 この宇宙に住む我々人間にとって、この宇宙は(存在することにおいて)最良なのかもしれませんが、我々にとっても、やはり生きていく上で、物理法則や人間関係などの様々な縛り(制約)を受けるのです。即ちこの宇宙しか知らない我々にとって、この宇宙こそは、何でも自分の望み通りになる夢のようなところではなく、あらゆる困難に責め苛まれるある意味地獄のような世界なのです。 (補足15) 神の存在を科学的に証明できると主張する人たちがいます。ビッグバンがその証拠だと。もしビッグバンが起こった原因が自然界になければ、それは神の存在を仮定するしかない。もちろんこの宇宙(現宇宙)のどこを探しても、この宇宙が誕生した原因は見つけられません。当たり前です。子供が誕生した原因を子供自体に見出せないことと同じです。子供か誕生した原因はもちろん親にあるのです。それが(宇宙の創造者としての)神が存在しなければならない理由です。神が「光あれ!」と唱えたから宇宙が誕生した。ただし、その前にお尋ねします。その神とは何者ですか?人間のように言葉を発する生きものですか?神は何語(ヘブライ語の発音)で、「光あれ!」と唱えたのか?その前に空気がなければ、音声が伝わりませんね。 なぜ、科学の世界に神を持ち込みたいのですか?神とは人間の心の中の存在ではないのでしょうか? (補足16) 宇宙の謎として、なぜこの宇宙には物質が多くて、反物質(注1)が少ないのでしょうか。膨張した母宇宙の領域が偶々物質の方が(反物質よりも)多かった(物質と反物質の性質が完全に対称ではなく偏っていた)のかもしれません。(補足17) また、なぜこの宇宙には”反重力”が無いのでしょうか?反重力とは重力に反発する力です。例えばAさんは普通の重力を持つ。Bさんは反重力を持つ。Aさんは普通に地球に立っていられます。しかしBさんは地球から飛び上がってしまう。反重力も理論的には存在してもいいはずのもの。しかし遠い宇宙を観測しても反重力の兆候は観測されません。これも宇宙誕生の際、偶々重力のものを選択した?のかも。(注2) いずれにしても謎です。 (注1) 物質を構成している原子。原子を構成している陽子や中性子そして電子とは性質が反対の反粒子(反陽子、反中性子、陽電子)から構成される物質のこと。この反物質と物質が衝突するといずれも光子(ガンマ線)になって消滅します。Aさんが物質、Bさんは反物質でできていたとしましょう。AさんとBさんが出会った瞬間、光とを放ち二人とも消滅するでしょう。 (注2) 重力と反重力は同じ宇宙の中では同居できません。 (補足17) 反物質よりも物質が多くなったのは単なる偶然ではなく必然だったという考え方もあります。宇宙のごくごく初期には放射エネルギーしかなく、その時光子から粒子と反粒子の対がいくつも作られては、また次の瞬間消滅して光子に戻る。その繰り返しの中ある一方の粒子だけが残り(自身が反粒子にもなるため、反粒子と出会っても消滅しない)、他方は消滅した。この生き残った粒子を”正粒子”、消滅してしまった方を”反粒子”と呼んでいるに過ぎないのかもしれません。このあらゆる物質の基になる”正粒子”が進化して(様々な性質を持ったあらたな粒子に変化し)現在の物質になった?というのも一つの仮説です。 (補足18) この宇宙において銀河、または銀河団の分布を見ると、銀河(銀河団)が密集している場所と、銀河が無いあるいはまぱらな場所が存在します。何故でしょう?これも宇宙がビッグバン以前、非常に狭い場所(あるいは一点)に押し込められていた時にも、量子力学でいう”波”の性質を持っていた。これがこの銀河が偏って分布している(密の場所と疎の場所がある)理由です。つまりここでも量子力学の正しさが証明されたわけです。量子力学も天文学も科学です。もし宇宙誕生を科学的に説明できる「量子重力理論」などが完成すれば、自然界に神の存在を仮定する必要もなくなるでしょう。科学に神はお呼びではないのです。 【余談】 時間や空間は本当に存在するのか? 最近、時間や空間は存在するのか?という考えがあるそうなのですが、それについて最後に興味本位的に考察してみます。 もし今この瞬間、すべての事象が一斉に止まってしまったら、あなたの目の前で時間が突然止まったとしたらどうでしょう。あなたは驚きとともにその光景に見入るでしょう。しかしあなたにとっては時間は止まってはいません。世界のすべてが静止しました。しかしただ一つだけ動いているものがあります。それはあなたの意識です。あなたの意識も同時に止まれば、世界が止まってしまったこともあなたには分からないでしょう。本当は時間なんかないのかも?あなたの意識も含めて何もかも止まっているのかもしれません。しかしそれを確かめようがない。つまり、時間が存在しないことを人間は認識できないのです。 人間は、今この瞬間の世界の状態を観測しています。それは時間的にある時刻即ち時間軸のある一点でです。もしその一点だけの観測なら、時間は止まっているでしょう。(有名なゼノン(ギリシャの哲学者)の「飛ぶ矢は不動である」というパラドックス) しかし人間はその矢が動いているのか止まっているのか分かります。人間は皆世界を認識するとき動きとして捉える。即ち観測しているのは今現在でも、物事を時間の流れとして認識しているのです。これが人間の意識の構造です。即ち、時間とは人間の意識のことなのです。 だったら人間の意識がなければ、即ち認識主体の人間が存在しなければそもそも世界自体が存在しないという独我論的世界観になってしまう。存在するのは自分だけ。その人間の死とともに世界も消滅する。でも、アインシュタインが死んでも世界は存在し続けているではないか?否、アインシュタインも人間であるが世界の一部。”自分”だけは人間の中でも特別。あくまで存在しているのは自分の意識だけ。否、自分も存在しないかもしれない。もはや哲学です。これでは科学とは言えません。 科学とは、それが絶対的に正しいかどうかに関わらず、自分とは独立した(無論自分が存在している限り無関係ではない)世界を客観的な存在として研究する学問であり、哲学とは異なるのです。 世間では、現代科学を何かと神秘思想、神や宗教と結びつけたがる傾向がありますが、そんなものは科学ではありません。
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