時間の遅れ この当たり前の「相対性原理」とこれが成り立たないと大変なことになる「光速度不変の原理」の二つから、実に驚くべきことが証明されるのです。 有名な「浦島太郎効果」。動いている人の時計の方が、止まっている人の時計よりもゆっくり進む。と言うことは、乗り物(例えば飛行機)に乗っている人の方が、家で座っている人よりも年を取らない?本当にそんなことが起こりえるんでしょうか。それを今から証明してみましょう。 説明図(図9「相対性理論の時間の遅れ」)をご覧ください。上にある緑の三角形は(大昔の)ロケットのつもりです。 ロケットは地球を飛び立ち、ある一定の速度で、ある一定の方向に向かって飛行しています。ここで一つの実験を行います。 ロケットの床にある光源から光(レーザー光線のようなもの)を天井へ向けて発射させ、天井にある鏡に反射させて、跳ね返った光を再び床で検知する。(地球を飛び立ったロケット内部において、床も天井(上も下も)ありませんが・・・) この状況をロケット内部とロケット外部(この場合地球)で観測します。この時相対性理論の要件に従って、以下の二つのことを条件とします。 (1) お互いに等速運動をしている観測者にとって(地球にいてもロケットに乗っていても)相対性原理が成り立つ (2) 光の速度は観測者によらず(地球にいてもロケットに乗っていても)不変である この二つだと足りないので、さらに条件を追加します。 (3) 光は障害物がない限り直進する(注) (4) 光が鏡などによって反射する際、光が鏡にあたってから光が鏡から飛び出すまでの時間は完全にゼロである 注:光は重力の影響を受けて曲がることが示されています。ただし今回は重力やそれに伴う加速度の影響は考慮しません。 地球から観測した場合、まず地球を基準にした座標(x-y)を設けます。地球から見てロケットの床はx軸にぴったり沿って進むようにします。つまり床ではyの値は0です。 同様にロケットを基準とした場合の座標(x'-y')を考えます。ロケットの床がx'軸です。ロケットは一定の方向に進むため、x軸とx'軸は完全に一致します。つまり床では y=y'=0 です。(補足1) 地球から見たロケットの速度をv、ロケットから見た地球の速度をv'。上記相対性原理(1)より、 v=-v' となります。(マイナスをつけたのは見かけ上の向きが反対だから) 地球で観測される光の速度をc、ロケット内部で観測される光の速度をc'。上記(2)より、 c=c' 。 地球から見たロケットの床から天井までの高さをL、ロケット内部での天井までの高さをL'。ここで単純に L=L' としてはいけません。本当かな?と疑う気持ちが必要です。 ロケットが静止していれば、当然、 L=L' です。しかしもしロケットが動いていたらLに対してL'は縮んだり伸びたりするかもしれない。ただし、Lに比例するでしょう。そこでその比をaとします。aは速度vによって変わりvの関数a(v)とします。ここで床の位置、y=0、y'=0は変わらない。天井の位置、y=L、y'=L'とすると、 L=a(v)・L' v=0で、a(v)=1、すなわち、L=L' 今度はこのL'を地球から観測したとすると、上記(1)より比例定数aは同じなため、 L'=a(v)・L となる。これに上の式を代入すると、L=a(v)・a(v)・L すなわち、a(v)=±1、床から天井に向っての方向をプラスにするのは地球でもロケットでも同じことから、マイナスは省いて L=L'となります。(補足2) ここから、説明図(図8)で示した、有名な直角三角形が得られます。 つまり、ロケット内部においては、光は床から天井に向けて発射され、天井で跳ね返って床に戻る経路は、a'→b'→a'。 それに対して地球では、ロケットが動いていることから、同じことが起こる経路は、a→b→c となります。 ロケット内部でも地球でも光の速度cに変化はないことから、光が床から発射され再び床に戻ってくる一つの現象において、それが完了するまでの時間が、経路が(床から垂直方向ではなく)三角形の斜面の部分に相当するため少し長くなる。従って、ロケット内部の経過時間t'は、地球から見た経路が(床から垂直の方向ではなく)三角形の斜面の部分に相当するため少し長くなることから、そこを光が通過する時間も長くなり、逆にロケット内部では経過する時間が相対的に短縮されます。 t'=√(1-v・v/c・c)・t ・・・この式は見にくいので、図9を参照してください。 ここから浦島太郎効果、つまり動いている物体では時間がゆっくり進む、と言うことが導かれます。もし光の速さまで達したなら、t'=0 であるため、時間は全く経ちません。 ところでこんなことが本当に起こりえるんですか? アインシュタインの時代は、そんな高速で飛行するロケットもわずかな時間差でも計れる時計もなかったことから、検証することができませんでした。 今日では、飛行機に精密な時計を積んで計ったところ、わずかながら時計が遅れることが確認されています。 この相対性理論で導かれることが他にもいくつかあります。 (1) ロケットでは、目的地までの距離が縮む ロケットでは時間がゆっくり進む、ということは、乗っている人から見れば距離が縮まったように観える。時間が変化すれば空間も変化する。時間と空間は相互に関係し、合わせて時空と言います。 (2) ロケットは重くなる ロケットの速度が速くなるほど、その質量が増す。 (3) ロケットは光の速度を超えることはできない ロケットをどれだけ加速させても、光の速度を超えるどころか、光の速度に達することさえできない。なぜなら、ロケットの質量が無限大になるから。 (4) 質量とエネルギーは同等である 質量mの物体は、m・c・cのエネルギーを持つ(cは光速を表し、29,9792,458メートル/秒)。これが核物理学や原子力エネルギーの分野で有名な式、E=m・c・cです(Eはエネルギー)。 以上、詳細は図9「相対性理論から言えること」を参照。 (補足1) もし、地球から見た座標系x-yのx軸に沿って宇宙空間に白いテープを張り、そのテープに沿ってロケットを飛ばしたとしましょう。その時ロケットから見ても床はそのテープとぴったり一致するはずです。それが相対性原理の正しい理解であり、もしロケットから観て床がテープから離れていたら、地球にいる人間とロケットに乗っている人間とが異なる事象を観測していることになります。 (補足2) もし、Lが床から垂直の方向にではなく、x軸に沿った方向(ロケットが進む方向)に置かれた棒状のものであれば、その長さは変化しないとは言えない。なぜかというと、床の高さはy=0で変化しなかったのに対して、棒の起点xは時間tとともに変化する(時間に依存する)ため。 理論的には棒の長さLは縮むことが分かっています。 L'=√(1-v・v/c・c)・L ・・・ロケットが止まっているときの棒の長さL、飛んでいるときの棒の長さをL'としました。
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